【映画レビュー:ブラッド・スローン】ギャングの世界に入った一般人の悲しい物語

今回は、映画『ブラッド・スローン』の感想レビューです。

よくあるギャングものかと思いきや、一般人がギャングの世界で生き残っていくという特殊な切り口が楽しめました。

運命の理不尽に振り回される、悲しい物語です。

前半はネタバレ無しのレビューなので、観る前の参考にしていただけます。

後半はネタバレ有りの感想・考察なので、まだ観ていない方はご注意ください。

映画情報
  • おすすめ度:8/10
  • 原題:『Shot Caller』
  • 主演:ニコライ・コスター=ワルドー
  • ジャンル:サスペンス
  • 公開:2017年
  • 長さ:121分(2時間01分)

序盤のあらすじ

株の仲買人としてエリート人生を歩んでいたジェイコブ・ハーロン。

妻と男の子とともに暮らし、何不自由ない、誰もが羨むような生活を送っていました。

しかしある日、飲酒運転の末に事故を起こし、同乗していた友人を死なせてしまいます。

その事故がきっかけで罪に問われたジェイコブ。彼がたどり着いたのは、凶悪犯が集まる刑務所でした。

ネタバレなしの感想

あらすじを見て分かるとおり、本作『ブラッド・スローン』はいわゆるギャングものです。

特殊なのは、もともとギャングとは何の関係もなかった一般人ジェイコブがその世界に巻き込まれていくというところ。

  • 「10年以上の服役を終えて仮釈放された現在」と
  • 「入所してからギャングの世界に巻き込まれていく過去」

この2つが交互に描かれていきます。

中盤までは淡々と進むのですが、それを踏まえた上でのラストの畳み掛けは息を呑みました。

どんでん返しということではないのですが、「そう来たか」と膝を打たずにはいられない展開がとても印象に残っています。

ギャングものではありますが、アクションとは考えない方がいいです。

不条理にもギャングの世界に入り変化していくジェイコブと彼の覚悟、選択を楽しむ映画だと思います。

 

気になったのは、登場人物の関係性がちょっと分かりずらかったことです。

僕の理解力が足りないせいもあると思いますが、特に武器売買に関係するキャラクターと展開が曖昧になってしまいました。とは言っても、ストーリー全体のおおまかな理解はそれほど難しくないと思います。

ストーリーに関してはネタバレを避けるため、これ以上はここでは書かないこととします。

 

本作から小さなメッセージを受け取るとしたら、

  • 飲酒運転の怖さ
  • 刑務所の意味のなさ

この2つがあると思います。

まず、善良な市民だったジェイコブはたった一度の飲酒運転でギャングの巣窟に放り出されることになります。

その中で生き残るには自らもギャングになるしかありません。

そして、ギャングの世界は一度足を踏み込んだが最後、刑務所を出てからもずっとつきまといます。

あくまで映画の中の話ですが、こんな理不尽なことが飲酒運転がきっかけで起こるわけです。

僕はそもそも車を運転しない人間なのですが、それでも改めて飲酒運転はリスクが大きすぎると思いました。飲酒運転はやめましょう。

そしてもう一点。

刑務所内のギャングの大物は、塀の中からでも外の世界に指示を出していました。

なぜそんなことが出来るかというと、看守も脅迫されたり買収されたりしているからです。

こんなことが実際に起きているのかは知りませんが、「多少はそういうことがあるんだろうな」と思いました。

 

以上、ネタバレなしの範囲でまとめると、本作はギャングものの中でもかなりの良作でした。

アクションがメインでもなく、推理や伏線回収があるわけでもないので、やや硬派な作品と言えるかもしれません。そして中盤までは非常に淡々としています。

しかし、ジェイコブの変化の様子や、終盤に見えてくるストーリーの全体像や締めくくりは見事です。

個人的には観て良かった作品ですし、特殊なギャングものとして価値ある作品だと思います。

ネタバレありの感想・考察

注意

以下の感想・考察はネタバレを含みます。ご注意ください。

既に観た方向けの内容です。

繰り返し書いたように、ラストシーンはかなり衝撃的でした。

一言でいうと、ジェイコブは刑務所内のボスギャングを殺して自分が新たなボスとなります。

ここに至るまでのざっくりとした経緯とその動機を、僕の理解した範囲でまとめてみたいと思います。

 

まず、ジェイコブは刑務所で生き残るために、ギャングの世界に入らざるを得ませんでした。そしてギャングの世界というのは一度入ったらもう死ぬまで出ることはできません。

ジェイコブがそれを悟るのは、仮出所してからのシーン。

刑務所内のボス「ビースト」との電話で、ジェイコブが指令を拒否しようとすると家族を人質に取られてしまいます。
(ビーストは、屋外の監房で右端にいる男)

このままだと、家族を危険に晒しながらビーストの命令に従うしかありません。

家族を守る確実な方法はただ一つ、ビーストを殺してジェイコブ自らがボスになること。

ビーストを殺すためには、刑務所内で接触するしかない。

 

そういうわけで、ジェイコブは自ら刑務所に舞い戻ってきました。

そのときにはギャング仲間フランクを殺害した罪で、既に終身刑が決まっています。

ジェイコブは上手く看守を出し抜き、見事ビースト抹殺に成功。新たなボスとなるのでした。

これで誰かの命令を聞く必要もありませんし、家族の安全も守れます。

ジェイコブ自身は終身刑のため、これから死ぬまでボスとして刑務所で生きる…。そんなラストでした。

 

ジェイコブの頭脳が光る、非常に面白い展開だと思います。

同時に、自らをとことん犠牲にしてまで家族を守ろうとしたジェイコブの覚悟たるや、見ていて清々しいものがありました。

では、このラストをハッピーエンドととるか、それともバッドエンドととるか。

僕が思うに、その両方が合わさった終わり方だったと思います。

確かに家族は守られました。しかしその一方で、ジェイコブはもうギャングの世界から足を洗うことは出来ませんし、終身刑を覆すことも出来ません。

少なくとも、飲酒運転をきっかけに巻き込まれた不条理な運命の中では最善の結果にはなった…のではないでしょうか。

なんとも物悲しいですが、それこそがまさに本作の一番の魅力だと思いました。

 

そう考えると、本作の邦題『ブラッド・スローン』は悪くありません。

「血塗られた王座」とでも解釈すれば、物語の結末にピッタリ一致しています。