【映画レビュー:TIME/タイム】時間が通貨となった世界を描くSF

今回は、映画『TIME/タイム』の感想レビューです。

25歳で歳をとらなくなり、時間を通貨として扱うという設定のSF映画。

設定は非常に面白いのですが、それを上手く活かしきれず突っ込みどころが目立ちました。

しかし時間の概念を使ってオリジナリティを追求したという点では、意欲作だと思います。

前半はネタバレ無しのレビューなので、観る前の参考にしていただけます。

後半はネタバレ有りの感想・考察なので、まだ観ていない方はご注意ください。

映画情報
  • おすすめ度:6/10
  • 原題:『In Time』
  • 主演:ジャスティン・ティンバーレイク
  • ジャンル:SF
  • 公開:2011年
  • 長さ:109分(1時間49分)

序盤のあらすじ

人間は遺伝子操作によって25歳からは歳をとらなくなりました。

その代わり人々は時間を通貨として所有し、あらゆる支払いを時間で行います。

時間の格差は大きく、その日暮らしをしている貧民もいる一方、何千年もの時間を持っている富豪もいます。

スラム街に住む主人公ウィルは貧民の1人であり、毎日ギリギリの時間で生き延びる生活をしていました。

ある時ウィルがバーで見かけた裕福な男を助けたところ、彼はウィルに100年以上もの時間を与えます。

いきなり莫大な時間を手に入れたウィルは、格差をなくすべく1人戦いを始めるのでした。

ネタバレなしの感想

本作『TIME/タイム』の特徴といえば、何よりその独特な設定です。

タイムリープやループなど時間を扱ったSF映画は数あるものの、時間を通貨として扱う映画はこれまでなかったように思います。

時間が通貨なので、硬貨や紙幣などのお金は全く出てきません。

コーヒー1杯は3分、タクシーは1時間、ローンの支払も時間で…といったように日常のあらゆる支払いを時間で行うのは、今で言うところのキャッシュレス決済に近いです。

さらに時間はただの通貨ではなく、その人の寿命でもあります。つまり、時間がなくなる(=時間切れになる)と死んでしまうというわけです。

SFファンならこの設定には注目せざるを得ないと思います。

25歳で成長が止まるので、役者も25歳以下しか出てきません。基本的に25歳で、あとは子供です。

なので絵面の点でも特殊な作品になっています。

 

なるほど確かに面白い設定なのですが、ストーリー上は突っ込みどころが多く、設定を活かしきれていなかったのが残念でした。

ネタバレになるのでここでは具体的には書きませんが、矛盾やあまりにも上手く行き過ぎな展開が多く感じます。
(詳しくは後で書きます)

一般に、映画には突っ込みどころは多かれ少なかれあるものですが、全体としての面白さでカバー出来ていれば個人的には問題ありません。

しかし本作のストーリーもそこまで目を見張るものではなく、ツッコミどころだけ悪目立ちした感がありました。

序盤のワクワク感が大きかったので、それを最後まで維持できる内容だったならかなりの傑作になっていたと思います。

 

そういうわけで、本作は「寿命としての時間=通貨」という設定が独り歩きしてしまった作品でした。

これから観るという方はSFやサスペンスとしてそこまで期待はしない方がいいかなと個人的には思います。

特に、ストーリーの展開にきちんとした理由を求める方にはあまりおすすめしません。

しかし、この非常に興味深い設定で映画を作ろうとしたことについては評価したいと思います。

ネタバレありの感想・考察

注意

以下の感想・考察はネタバレを含みます。ご注意ください。

既に観た方向けの内容です。

ギリギリ間に合わない母親

この世界の厳しさがよく分かるのが、ウィルの母親が絶命するシーン。

ウィルと同じく母親も毎日をギリギリの時間で生きる生活をしていました。

ある日バスに乗って帰ろうとすると、運賃が値上げされていて乗れません。

本来であればバスで返ってウィルに時間を分けてもらって明日を迎えるはずでした。

バスに乗れないということで母親は全力で走って帰ることに。

ウィルのすぐ側まではたどり着くものの、ギリギリ間に合わず母親は死亡(時間切れ)。その日暮らしがどれほど大変かが分かります。

ちなみに、時間切れで一度死んでしまった人間に時間を分けて生き返らせることは出来ません。

走る人は貧乏人

「これは面白い」と思ったのが、ウィルが走ったことでスラム出身だとバレてしまうシーンです。

時間がある人(富裕層)は走りません。なぜなら、時間に余裕があるため急ぐ必要がないからです。

一方、その日暮らしでギリギリ生きている貧民は走ります。貴重な時間を無駄にしないためです。

富裕層が住む街ニューグリニッチにたどり着いたウィルはいつもの習慣で走ったことでシルビアに元貧民なのがバレます。

作中では「人は習慣を変えられない」といったセリフも出てくるので、それとも若干リンクしています。

これについては、時間=通貨の設定をうまく活かした小話だなと思いました。

以下では主に、本作を観ていて引っかかった点について考察していきます。

はじめに書いておくと、これはダメ出しやクレームではありません。

本作は設定が特殊であるゆえに、どこにも矛盾のない作品は作れないと思います。

なので、ここで言いたいのは「どうしてもこういうところに矛盾は出てしまうよね」ということに過ぎません。

むしろ、設定を掘り下げて考えるところにも本作の面白さはあると思います。

なぜこのような世界になったのか

本作の舞台は、一応近未来ということになっています。

つまり、実世界のように貨幣を通貨として扱っていた世界から、時間を通貨として扱う世界に遺伝子操作によってシフトしたということです。

ここで思うのは、そもそもどうしてそんな世界にシフトする必要があったのかということ。

僕の理解では、その理由は「人口が増えすぎるのを抑えるため」です。

遺伝子操作を受けることを大衆が受け入れることはまずないと思うのですが、その矛盾は無視します。

設定上25歳になった人間は外見が変わらなくなり、その時点で余命1年が与えられます。

つまり、人間は基本的に26歳が寿命であって、それ以上生きるには頑張って時間を稼がないといけません。

特にスラム街では時間切れで死んでいく人がおり、時間ベースの世界では人口は増えにくい感じは(一応)します。

さらに、スラム街で物価や税金が上がるのも人口を抑制するための1つの方法です。これは作中でハッキリと語られています。

そうでもしないとやっぱり人口は増えてしまうらしいです。

時間はどこから湧き出てくるのか

個人的に一番疑問なのは、世界全体の時間は絶対足りなくなるんじゃないか、という点です。

というのも、通貨と違って時間は何もしなくても勝手に総量が減っていくからです。

例えば、ここに1万人の人間がいるとします。

1日(=24時間)経つと、その1万人は生きているだけで24万時間消費します。世界から24万時間消えるわけです。

一方、通貨は違います。

誰かが100円払ったらその100円は他の誰かのもとに渡るので、単純に考えるとゼロサムゲーム(プラスマイナス0になる取引)です。

作中で人々は給料として時間を得ているわけですが、その時間は一体どこから出てきているのか。

人々の労働が時間を無から生み出しているわけではないでしょうから、どうにも矛盾する気がします。
(逆に、もしそれが出来るならこの疑問は解決)

繰り返すと、世界全体で時間は絶対に足りなくなるとしか思えません。

100万時間は大金なのか

ストーリー終盤で、主人公ウィルと相棒(になった)シルビアは100万時間を強奪して、世界にばらまきます。

なるほど大金のように思いますが、よくよく考えると、100万時間って世界全体で見るとめちゃくちゃはした金です。

上でしたような計算をもう一度してみます。

人口を抑制したといっても、舞台の(多分アメリカ)だけでも1億人はいるはずです。
(ざっくりとそう考えます)

すると、アメリカだけでも1日経つと24億時間がポッカリなくなることになります。

では、この世界に100万時間をばらまいて一体何の足しになるのか。

仮に100万時間の強盗を100回繰り返したとしても1億時間にしかなりません。

なのでどうせなら1兆時間とかにした方がまだ良かったかなと思いました。

ちなみに、100万時間ばらまくことの無意味さについては富豪であるシルビアの父も語っています。

「こんなことをしても1世代、2世代は何とかなるかもしれないが、結局何も変わらない」という内容の台詞がありました。

しかし、上のシミュレーションを考えると、1世代ですらどうにもならないと思います。

検問をアッサリ破るウィル

途中で検問を車で破るシーンがあります。

思わず笑ってしまったのは、ウィルが検問所(小さい建造物)を車でぶち抜いて突破したことです。

普通車でいともたやすくぶち抜けるくらい脆い木造の検問所とは一体。

なぜか待ち構えていたギャング

ウィルとシルビアが車で逃走するシーン。

道にスパイクストリップ(棘が付いていてタイヤをパンクさせるアイテム)が敷いてあって、車が動かなくなってしまいます。

これは誰の仕業かというと、ウィルに恨みがあるスラム街のギャングたち。

これは流石に「発振器もないのにどうしてそこを通ると分かったのか」と思ってしまいました。一応ここはSFの近未来なのですが。

どう考えても上手く行きすぎですが、僕はもう一周回って許せています。

認証もなしに時間を供給するパトカー

クライマックスで、ウィルとシルビアの時間が底をつきかけます。

もはや絶体絶命に思われますが、ウィルがパトカーを発見し、その中にあった時間供給装置から間一髪時間をゲット。

シルビアにもギリギリ分け与えて、2人は無事に生き残るという展開でした。

ここで、認証もなしにサクッと時間をゲットできるのはちょっと不思議です。

あまりにもガバガバなセキュリティですが、この仕組みがないとラストシーンは成立しないわけで。

以上、ネタバレも含めて気づいたことをざっと書いてみました。

個人的に作品の満足度はそこまで高くなかったのですが、こうしてみると考えたことはけっこう多かったと思います。

そう考えると、なんだかんだで見入った作品なのかもしれません。

映画そのものを楽しむというより、その後アレコレ考察していく方が面白い映画でした。