【映画レビュー:エスター】養子にとった不気味な女の子を描くサイコサスペンス

今回は、映画『エスター』の感想レビューです。

圧倒的な不気味さが印象的なサスペンスでした。

前半はネタバレ無しのレビューなので、観る前の参考にしていただけます。

後半はネタバレ有りの感想・考察なので、まだ観ていない方はご注意ください。

映画情報
  • おすすめ度:7/10
  • 原題:『Orphan』
  • 主演:ヴェラ・ファーミガ
  • 監督: ジャウム・コレット=セラ
  • ジャンル:サスペンス
  • 公開:2009年
  • 長さ:123分(2時間3分)

あらすじ

3人目の子供を死産したケイト・コールマンは、夫と2人の子供と暮らしていました。

養子を取るために訪れた孤児院で、エスターという女の子と出会います。

彼女と夫婦はすぐに意気投合し、養子として迎えることにしました。

しかし、ともに生活するうちにエスターの不気味な行動や性格が浮き彫りになってきます。

総評

僕にとってこの映画は、すごく良いところとすごく悪いところを合わせ持った特殊な作品です。

エスターを中心とする映画全体の凄みは圧巻でした。

一方で、観てみてイライラしてしまったのも事実です。

このどちらに焦点が当たるかで、評価が分かれる作品だと思いました。

ジャンルとしては、サスペンスと考えて問題ないと思います。

びっくりするシーンが多少ありますが、あくまで現実的なのでホラーとまではいきません。

まずはネタバレなしで感想を書いていきたいと思います。

良かったところ

本作を観てまず目を引いたのは、エスター役の演技力でした。

あらすじから分かるとおり、エスターは不気味な女の子です。

非常に落ち着いているだけでなく、誰に対しても臆さず話します。

ケイト夫婦に引き取られてからは、徐々に不気味な側面も見せるように。

実を言うと、僕は普段映画を観ていて演技に注目することはあまりありません。

しかし本作に関しては、エスターを演じる子役には「これは…」と思わされました。

エスターを演じるイザベル・ファーマンは、1997年生まれ。本作の公開は2009年です。

すると、イザベルは撮影当時10歳ちょっとでしかなかったことになります。

もちろん演出によって引き立たせている部分はあるでしょう。

それでもおよそ10歳の女の子がここまで凄みが出せるのは、純粋にすごいなと思いました。

 

最後まで観て一番楽しめたのは、後半の展開です。

ただこれについてはネタバレになってしまうので、ここでは書きません。

なので観る前は「不気味な女の子が出てきて何かが起こる映画なんだな」くらいの認識に留めておくのをおすすめします。

このレビューに関しても、後半はネタバレを含む考察になるので、観る前は読まないでください。

良くなかったところ

上に書いたとおり、この映画にはすごく良いところとすごく悪いところがありました。

良いところについては、直前に書いたとおりです。

一方良くなかったのは、観ていてどうしてもイライラしてしまうシーンが多かったことです。

まぁこれは僕がそう感じたに過ぎないのですが…。

ネタバレにならない範囲で書くと、エスターが来てからは色々な問題が起こります。

しだいにケイト(母親)は、「エスターはやばい奴なんじゃないか」と思うように。

ケイトが危険に気づく一方、周りの人間が鈍感過ぎたのがイライラポイントでした。

夫ジョンと分析医が特にそうなのですが、おかしなことが起きてケイトが訴えても「な~に大丈夫大丈夫」的な感じです。

特に中盤からは「いやいや流石にこのままじゃダメでしょ」と思って、もやもやしてしまいました。

そうはいってもこれは映画なので、ストーリーを進める上で、このような鈍感さは仕方ないかなと思います。

ネタバレなしのまとめ

以上、ネタバレを含まない範囲での感想レビューでした。

登場人物の鈍感さについては、正直な感想を書きました。

しかし本作にはそれを上回るだけの良いところがあります。

女の子の不気味さを全面に押した出したサイコサスペンス、と聞いてピンときたなら間違いない作品です。

あと、ネタバレ防止のために、観る前にレビューはあまり漁らないほうがいいと思います。

ネタバレありの感想・考察

注意

以下の感想・考察はネタバレを含みます。ご注意ください。

特に本作はネタバレで面白さを損なう可能性が大きい作品なので、観る前は以下を読まないのを強くおすすめします。

細かい仕掛けがウマい

最後まで観てみて、細かいところまで作り込んであるなと気づきました。

例えば、エスターの首・手首の飾りどんでん返しにつながる伏線です。

精神病棟にいるとき手錠や首輪をされていて、飾りはその跡を隠すためでした。

 

実の子供2人がケイトのピアノに興味ないのも、ウマい小細工です。

女の子マックスは難聴なのでそもそも音楽を楽しめません。

男の子ダニエルはギターに夢中なので、ピアノには無関心。

ゲーセンに置いてあるようなギターのゲームでダニエルが遊ぶシーンが何度か出てきました。

ピアノへの無関心も後にエスターの辛口なセリフの材料になっていて、ただの設定以上の意味があります。

 

ケイトのアルコール中毒もストーリーに二重三重に組み込まれています。

まずケイトは3人目の子供を死産したストレスからアルコール中毒になった過去があります。これは設定として必然性があります。

中盤でケイトは酒を買い込むも、結局飲まずに我慢します。

その翌日マックスを乗せた車が坂を滑り落ちる事件が発生。

それはエスターがサイドブレーキを外して意図的に起こしたものでした。

しかしケイトが買った酒が見つかり、事故の原因があたかもケイトの飲酒であるかのように扱われてしまいます。

これもウマいと思いました。

ストーリーのどんでん返し

僕はどんでん返し系の展開が好きなので、エスターの正体は面白かったです。

ネタバレすると、彼女はなんと本当は33歳でした。

ホルモン異常が原因で、体は子供のまま大人になったというわけです。

すると、あまりにも落ち着いた物腰の説明もつきます。

観る前からどんでん返しとは聞いていたのですが、これは全く予想できませんでした。

またエスターは根っからの殺人鬼であり、かつては精神病棟に収容されていました。

病棟から抜け出したという設定は都合が良い気がしますが、まぁ映画ということでOKとしましょう。

エスターの目的とは

観ていて個人的に気になったのは、エスターのあらゆる行動の理由です。

事実としてエスターは、

  • かつて養子として一緒に暮らしていた一家を皆殺しにした
  • 精神病棟から逃げ出した
  • 孤児院の中で、あくまで子供として振る舞った
  • ケイト夫婦に養子として引き取られることに同意した
  • ケイトの家においても、同じく皆殺しにしようとした

という行動をしています。

こういう行動や選択をする理由は何なのかなと。

 

いや、その答えは「エスターが精神異常者だから行動に合理的な理由はない」といってしまえばそれまででしょう。

そもそも映画なので、面白い展開になるように行動する、という側面はあります。

ただそれだけだと、どうしても味気ない。

そこで僕なりの解釈を書いてみたいと思います。

 

僕の理解が正しければ、エスターの母親も精神異常者で、エスターは病棟の中で生まれました。

そういうわけでエスターはまともな育ち方をしていないと予想できます。

さらにホルモン異常で体が大きくならない現実とも直面しなければなりませんでした。

現在33歳ですから、成長の異常に気づいてから20年近くは経っていることになります。

そのあまりにも残酷な経歴の中で人格が歪みに歪みきったとしても、おかしくはありません。

同時に、母親から異常者の気質を受け継いでいるとも思います。

 

現状として、エスターはいともたやすく殺人を犯すサイコパスです。

自分をからかった女の子を高い場所から突き落としたり、自分を孤児院に連れ戻そうとしたシスターをハンマーで滅多打ちにしたりしました。

ただ、それは自分に害があると判断したからです。

だからといって人を殺す理由にはならないですが、全く理解できない理由とまではいきません。

 

しかし目につくのは、里親を誘惑して拒絶されたから殺す、という行動です。

ケイトの家に来る前も、父親を誘惑して拒絶されたことが放火のきっかけになりました。

次いでケイトの家でも、父親ジョンを誘惑して同じく拒絶され、ナイフで刺し殺します。

ここは単純に異常者だからというのではなく、体の成長と密接に関係していると思います。

エスターは本来33歳ですから、大人として認められたいという気持ちがあるはずです。

実際、彼女がそういう気持ちを吐き出すシーンはありました。

しかし現実として、エスターは養子ですし、体は10歳くらいの女の子です。

少なくとも性的な意味で女性として受け入れられるはずはありません。

これはエスターだからこそあり得た殺害動機でしょう。

同じ境遇にない人間からは想像できない境地だろうなと思いました。

おわり

以上、映画『エスター』の感想レビューでした。

もしイライラせずに観られていたら、個人的に相当な傑作だったと思います。

普段映画を観ていてイライラしない方なら、きっと楽しめるはずです。

サイコサスペンスがお好きな方はぜひチェックしてみてください。