【映画レビュー:タイムシャッフル】未来を写すカメラを3人の若者

今回は、映画『タイムシャッフル』の感想レビューです。

最小限のキャストとセットを使い、プロットを練ることに全振りした特殊な映画でした。

前半はネタバレ無しのレビューなので、観る前の参考にしていただけます。

後半はネタバレ有りの感想・考察なので、まだ観ていない方はご注意ください。

映画情報
  • おすすめ度:7/10
  • 原題:『The Time Lapse』
  • ジャンル:SF
  • 公開:2014年
  • 長さ:103分(1時間43分)

あらすじ

フィンは絵を描きながらアパートの管理人を務める青年。

彼の恋人キャリー、そして親友のジャスパーの3人で共同生活をしていました。

ある日窓向かいの住人ベゼリデスの様子を見に行くと、彼の姿はなく、部屋には大量のポラロイドと巨大なカメラが。

3人は、どうやらそのカメラは24時間後の未来を写しているらしいと気づきます。

その後、秘密を知った3人はカメラの魅力と危険に巻き込まれていくのでした。

ネタバレなしの感想

まず目を引くのは、24時間後を写すカメラという奇抜な設定でした。

アニメ「ドラえもん」や、TV番組「世にも奇妙な物語」に出てきそうな便利なSFアイテムです。

なるほど面白そうな設定…と思って観てみたところ、それ以上に特徴的だったのがキャストとセットの少なさでした。

実際に出てくるキャストは10人もいないくらいで、舞台もアパートとその周辺のみ。

僕が観た映画でいうと、『トランス・ワールド』に近いと思い出しました。

【映画レビュー:トランス・ワールド】ミニマルな要素とプロットで魅せる秀作

『トランス・ワールド』もキャストとセットを最小限に絞った意欲作であり、純粋にプロットの面白さだけで魅せています。気になった方はあわせてどうぞ。

 

では肝心のストーリーはというと、キャストとセットのシンプルさに反して、かなり複雑に感じました。

「24時間後を写すカメラ」が設定のベースとなるのですが、それだけでは理解できない展開もあります。

僕自身、最後まで観て「あれは何だったろう…」と、理解しきれず曖昧なままの部分がありました。特に終盤はかなり駆け足に感じます。

後で他の方のレビューを参考にして補完したり、伏線に気づくこともありました。

低予算でよくこれだけのプロットを構築したものだと感心します。

そういうわけで、ストーリーは良くも悪くも複雑という感じです。つまり、非常に練られていると言える一方で、漫然と観ているだけでは置いていかれるとも言えます。

 

フィクションなので仕方ないのですが、本作ではどうしても「逆ご都合主義」なところがあります。

どういうことかというと、もし3人が便利なカメラを上手く使いこなし、リスク管理まで完璧にこなしたとしたらたぶん映画になりません。

映画なので山あり谷ありの展開が必要です。そのためには観ている側からすると「なんでそこでそうするんだよ」的な行動も必要になってきます。

なので正直もどかしく感じたところもあるのですが、それを言い出すと映画というものが観られなくなってしまうので仕方なしです。

 

全体の感想をまとめると、この映画は大作ではありませんが工夫を凝らした意欲作です。

本作は1時間43分くらいと、かなり短い方です。展開もサクサク進んだように感じたので、テンポはいいと思います。

プロットと設定の複雑さゆえに、じっくり理解するには相当頭を使います。

なので人を選ぶ作品ではあるのですが、「低予算という制約のもとでプロットを練りに練って面白くする」系の作品が好きな方にはおすすめです。

【映画レビュー:トランス・ワールド】ミニマルな要素とプロットで魅せる秀作

ネタバレありの感想・考察

注意

以下の感想・考察はネタバレを含みます。ご注意ください。

既に観た方向けの内容です。

ストーリーの結末と教訓

ストーリーはバッドエンドに終わりました。

フィンとジャスパーは死亡し、キャリーも逮捕されてしまいます。

この終わり方を受けて、本作にメッセージを1つ見出すとしたら

「楽に上手くいく方法なんてこの世にはない」

かなと思います。

誰もが想像するとおり、フィンたち3人組はカメラを使ってお金儲けを始めました。

しかしそのまま上手くいき続けるなんてことはなく…。アイヴァン(レースの胴元であるギャング)に目をつけられて大変な目に合います。

お金という点以外にも、フィンとキャリーの関係も同じです。

キャリーはカメラが午前中も撮影することを利用しようとして、2人には秘密で1人であれこれやっていました。
(それが功を奏していたのかはともかく)

キャリーの狙い(というかモチベーション)は上手くいっていなかったフィンとの関係を修復することでした。

しかしそれもカメラでサクッと解決することはなく、あろうことか彼女自身がフィンを撃ち殺す始末。

こういうバッドエンドのストーリーが教訓となり、僕は「楽に上手くいきそうなもの」には頼らずコツコツ頑張ろうと思いました。

キャリーは何をやっていたのか?

個人的に特にむずかしく感じたのが、終盤明らかになるキャリーの1人行動。

かなり駆け足な描写で、確信を得ないまま終わってしまいました。

僕の一応の理解した内容を書きたいと思います。あくまでも個人的な理解・考察なので、間違っている部分もあるかもしれません。

 

まず、カメラが午後8時だけ撮影するというのは思い込みでした。

実際には1日のうち、午前8時と午後の8時の2回撮影する仕組みだったわけです。

それを最初から知っていたのはキャリーのみ。

なぜそうなったかというと、最初にベゼリデスの部屋を訪れたのはキャリー1人だったからです。

そこで自分に不都合な午前のポラロイドを発見したため、それを隠し、あたかも午後しか写さないかのようにでっち上げました。

しかし、これまでの午前の写真のほとんどは壁に貼ったままです。

あとから入ってきた2人はそのことをあまり深く考えず、午後しか写さない説をとりあえず信じることに。

で、午前の撮影を知っているキャリーは他の2人に知られないようにそれを利用し続けます。3人で午後の撮影を利用するのと、要領は全く同じです。

 

本作の一番のどんでん返しポイントはこの「実は午前も撮影していた」じゃないかと思います。

壁一面のポラロイドを最初に見つけたとき「朝の写真」の存在ははっきりと描かれているので、これだけでも伏線としては十分です。

最近の朝の写真がないことについてキャリーは「最近は午後だけなのかも…」と嘘の推測を口にしますが、なるほどこれも伏線。

そして、この真実が明らかになるのが終盤のシーン。

キャリーは、ジャスパーに殴られて怪我をしたフィンを寝室に誘導します。

なんか変だなと思ったフィンはこっそり部屋を出て、午前の撮影をしているキャリーを発見。そこで午前の撮影がフィン、そして視聴者にも明らかになりました。

 

ここで個人的に疑問だったのは、「キャリーが午前の撮影を隠し続けたのは上手く行きすぎではないか」ということです。

3人で共同生活をしているわけなので、毎日午前にリビングで1人でいられるかというと…。まぁここはご愛嬌ということで。

 

もう一つ、キャリーが最後に撮影した写真には「窓際で見つかるな」という張り紙が映っていました。

これは要は、「午前8時の写真をこっそり撮るときに、寝室から抜け出してきたフィンに見つかるな」という意味だと思います。

しかし現実では見つかってしまっているわけで、これは一体どういうことなのか。ここが僕には理解できず、モヤッとしました。

キャリーは昨日の時点でその写真を見ていて、一応フィンを隔離するという対策はしています。

僕なりの理解では、

カメラの写真通りに行動しても、それは必ず上手くいく保証にはならない

ということなのかなと。

3人は(というか僕も最初は)写真の通り行動すれば上手くいく(ハッピーな結果になる)と思っていました。

しかし、実際のところそれは思い込みなんじゃないか、ということです。

写真の通りに行動しても、結局ジャスパーとフィンは死亡し、キャリーは逮捕されます。

「窓際で見つかるな」の張り紙にしても、現実は「窓際で見つからないように行動しても、見つからないとは限らない」ということなのだと思います。

プロットと設定の作り込みはすごい

以上僕なりの理解と考察を書いてきましたが、あまり確信がありません。

理解の間違いや、そもそも答えがなく想像するしかないポイントもあるでしょう。

いずれにせよ、本作プロットの作り込みには驚かされます。

上に書いたようにツッコミどころはありつつも、よくここまで考えたなと感心しました。

映画を観た時間だけでなく、その後に自分でアレコレ考えることで完結する映画だと思います。

 

途中で紹介した似ている映画↓

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