【映画レビュー:トレーニングデイ】悪徳警官と正義に燃える新人の1日を描く

今回は、映画『トレーニングデイ』の感想レビューです。

悪徳ベテラン刑事と正義感に燃える新米の姿を描いたサスペンス系の映画でした。

個人的には非常に満足。かなりアタリの部類です。

前半はネタバレ無しのレビューなので、観る前の参考にしていただけます。

後半はネタバレ有りの感想・考察なので、まだ観ていない方はご注意ください。

映画情報
  • おすすめ度:9/10
  • 原題:『Training Day』
  • 主演:デンゼル・ワシントン、イーサン・ホーク
  • ジャンル:サスペンス
  • 公開:2001年
  • 長さ:120分(2時間0分)

あらすじ

ジェイク・ホイト(イーサン・ホーク)は麻薬捜査課に転属になったばかりの新人警官。

麻薬捜査課の上司であるアロンゾ・ハリス(デンゼル・ワシントン)のもとで1日訓練を受けることになります。

アロンゾが売人を嗅ぎつけ逮捕する手腕は見事…。しかしその一方で、彼は法に触れるやり方も辞さないということを、ジェイクは知りました。

行動をともにするにつれて、正義感に燃えるジェイクはアロンゾへの不信を募らせていきます。

ネタバレなしの感想

本作『トレーニングデイ』は悪徳警官の姿を描いた作品です。

ジャンルとしてはアクションやサスペンスとも言えますが、悪徳警官を主題としたある種のドラマと考えたほうが個人的にはしっくりきます。

映画タイトルからは内容が全く想像できず期待度はそれほど高くなかったのですが、これがまた面白い。

思いもよらぬ掘り出し物でした。

 

後述するようにもちろんストーリー自体の面白さも印象的なのですが、一番印象に残っているのは登場人物の濃密な雰囲気です。

まず目を引いたのは、デンゼル・ワシントン演じる悪徳警官アロンゾの覇気でした。

彼の行動や語気には恐れというものが全くありません。警官として売人を締め上げる一方で地元のギャングを牛耳るなど、カリスマ性に溢れています。

僕は映画を観ていて演技そのものに感想を持つことは少ないのですが、今回ばかりは流石に圧倒されました。

一方、イーサン・ホーク演じるジェイクも後半では力強さが増してきます。

序盤こそアロンゾに気圧されるだけの新人警官でしかないのですが、正義感に突き動かされてからは別人です。

この変化は、映画の中で面白いポイントの1つでした。

また、モブキャラとして登場するギャングもリアル感があってよかったです。

この映画では実際のストリートギャングの協力のもとで撮影場所を用意したとのことで、雰囲気作りについては徹底していると思います。

 

肝心のストーリーはというと、これもまた面白く、最後まで集中を切らさずに観られました。

上にも書いたように、『トレーニングデイ』というタイトルからは内容が想像できません。

果たしてそれがドンパチアクションなのか、割とほっこり系のドラマなのか。

実際何が面白かったかというと、ストーリーの中に小話程度の伏線→回収がいくつかあったことです。
(全体としては伏線回収ものではない)

もちろんこれはメインストーリーにも深く関係していて、言わば小さな「どんでん返し」映画をいくつも観ているような感じでした。

個人的にこの手の伏線回収サスペンスは好物なので、楽しめたポイントです。

序盤では物語がどういうふうに収束するのか全く予想できませんでしたが、最後はちゃんとオチがありました。

それを区切りのいい終わり方と考えるか、それともモヤモヤした最後と考えるか。ここは賛否両論だと思いますが、僕はあれで良かったと思います。

ネタバレとなる内容とそれについての感想は、記事後半で書こうと思います。

 

逆に何か悪いところというと、特別大きな不満点はありません。

強いていえば、アロンゾの過去がちょっと気になりました。

ロジャーという人物が「ジェイクは昔のアロンゾに似ている」と言うシーンがあります。

ここで、アロンゾが破天荒なのも何か特別な過去があったからなのか…と予想したのですが、その描写はありませんでした。

もしそういう背景も描かれていたとして、それも魅力になり得たとしたら、もっと深い作品になっていたと思います。

 

全体の感想としては、本作はかなり満足度の高い作品でした。

本作は僕の中でかなり特殊な作品で、「あれと似ている」ということが言えません。

ベテラン刑事と新人という点では一見ありがちですが、中身は独特です。

ざっくりと洋画が好きという方なら、おおむね楽しんで観られるのではと思います。個人的にはかなりおすすめの部類。

ネタバレありの感想・考察

注意

以下の感想・考察はネタバレを含みます。ご注意ください。

すでに観た方向けの内容です。

小話程度の伏線回収

ネタバレなしの部分で触れた伏線回収について。

面白かったので、僕が理解した範囲で書いてみたいと思います。

 

まず1つ目は、強姦されかけていた女子学生の話。

序盤でジェイクが女子学生をレイプ魔から助けたとき、「女子学生のいとこがギャングで~」みたいな話が出てきます。

ここだけ観るとただのワンシーンなのですが、これがちょっとした伏線になっていました。

後半でジェイクがギャングの家で暴れて殺されかけたとき、ギャングはジェイクのポケットから女子学生の学生証を発見。

なんと女子学生のいとこというのは、まさにジェイクを殺そうとしていたギャングのことでした。

そういう恩があったということもあり、ジェイクは間一髪、事なきを得ます。

 

もう1つは、アロンゾの勧めでジェイクがマリファナを吸うシーン。

ジェイクは押収したマリファナを吸ったことで、意識が朦朧(もうろう)するとともに「薬物検査されたら困る状況」になります。

これが後で効いてきます。

アロンゾはチームで売人ロジャーを殺し、ジェイクが正当防衛の結果ロジャーを殺したという嘘のシナリオをでっち上げました。

狙いは何かというと、大物の売人であるロジャーを警官の職務として合法的に殺害し、彼が持つ金の一部をかっさらうことです。

ジェイクとしてはそんな法に触れることはしたくないと主張するのですが、時すでに遅し。

ジェイクが反対すれば(アロンゾの手により)薬物検査をさせられて、自分が逮捕されることになります。

一方、アロンゾのシナリオに同意すればジェイクはヤクの売人を仕留めたヒーローです。

アロンゾがマリファナを勧めたのは他ならぬこの計画のためで、ロジャーが死んだあと、ジェイクはアロンゾの言いなりになるしかありませんでした。

上手くまとめられたか分かりませんが、既に観た方なら「あれのことね」となるはずです。

 

もしかしたら、他にもこんなギミックがあるかもしれません。

こうした中程度の伏線回収があるおかげで、途中全くダレずに観ることができました。

アロンゾは正義か悪か

本作では、悪徳警官であるアロンゾと純粋に正義感に燃えるジェイクが強烈な対比になっていました。

アロンゾの行動も実は正義感がベースになっているんだろうか…と一時思ったのですが、最後まで観るとどうやらそうではないようです。

上にも書いたように、アロンゾはヤクの売人を逮捕するためなら法に触れることもやってのけます。

もしそれが純粋にヤクの売人という犯罪者を逮捕するためなら、まだ正義と言えたかもしれません。

しかし、終盤ではアロンゾは全くもって自分のためだけに非合法なやり方で大金を用意します。

ざっくりいうと、アロンゾはロシア人の大物をうっかり殺してしまい、その埋め合わせで大金を用意しなければなりませんでした。

ロジャーが殺されたのはこのためです。

これは完全に自分の都合なので、その金を用意するのと正義の行いとは本来全く関係はありません。

 

ストーリーを勧善懲悪とみなすなら、ジェイクの行動によって間接的にアロンゾの悪は罰せられます。

ロシア側に渡す金は、最終的にジェイクがアロンゾから奪い取る形になりました。

これはもちろんジェイクが自分のために欲しかったからではなく、法に触れるやり方で得た金がアロンゾに渡るのが正義感から許せなかったからでしょう。

金を用意できなかったアロンゾはロシア人に襲撃され、無残な死を遂げます。

ジェイクのその後は分かりません。

そのまま麻薬捜査課に籍を置き続けるのか、それとも駐禁取締のイージーな仕事に戻るのか。

しかし、ストーリーの中でジェイクが大仕事をしたのは間違いなく、アロンゾという巨大な悪徳警官を抹殺するに至りました。

僕は勧善懲悪なストーリーが好きなので、このラストは大いに満足です。

気に入ったセリフ

映画の中でものすごく印象に残ったセリフがあります。

アロンゾの自宅(?)でジェイクと撃ち合いになるシーンで、アロンゾがこう言いました。

問題は事実じゃない

何を証明できるかだ

これは映画の範囲を超えて、日常でもかなり当てはまることなんじゃないかなと。

言い得て妙だと思いました。